タイムグラファーは何を測定する為に作られたのか

いつの時代でも、時計は狂いの少ないものの方が好まれます。時計メーカはそして時計師はみな狂いの少ない時計を作ることを目標にしていると思います。初期の頃は何か標準になる狂いの少ない時計と測定対象の時計を比較することで時計の精度というものを出していたのだと思います。

機械式時計はテンプや振り子の持つ往復運動の等時性に頼って正確さを出しています。時計の狂いを少なくする為にはまず等時性を維持する様にすれば良いのです。ところが、これらの時計の動力であるゼンマイはその出力が常に変動する(おおざっぱに言うとだんだん弱くなっていく)という厄介な特性を持っています。常に同じスピードに調速されているテンプならば完全な等時性が得られるはずですが、ゼンマイのトルク変動に関わらず等時性を得られる時計というのはそんなに簡単に作れるものではありません。

ゼンマイの出力の影響を極力受けず、等時性を発揮できる時計を作る為には、テンプの等時性がどのように変化するのか調べる必要があります。ただ正確な時計と比較するだけではテンプの等時性の変化は詳しくは判りません。そこで様々な工夫がなされた結果現在のようなタイムグラファーが作られたのだと考えています。

タイムグラファーは単純に脱進機の刻音をある規則に従ってグラフ化しているだけですが、実に巧妙に考えられています。タイムグラファーで等時性を測定するということは、グラフの直線性を見るということと同じ意味なのです。これは調整の理想が非常に判りやすいという意味でもすばらしい方法だと思います。ゼンマイのトルクを変化させてそれぞれのグラフを比べたとき、線の傾きに変化が無く(どこかで曲がらなかったということ)それぞれが直線であれば、安定した等時性が得られているということになってきます。これは長時間一つの時計を測定し続けなくてもある程度の結果が得られることを意味します。


タイムグラファーは何を測定する為に作られたのか…

それは、『テンプの等時性を的確に測定する為に作られた』

だと考えています。

でも、タイムグラファーは歩度測定器というではないか?

『歩度を測定する為のもの』ではないのか?

確かに…その問いに対する答えはまた別の機会に。

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